ザ・ローリング・ストーンズ その12 : メインストリートのならず者

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EXILE ON MAIN ST. by The Rolling Stones

【評価】☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)

【概要】
1972年5月発売の第10作。スパンは13か月。2枚組にしては短いと思うが、68年にブルース・ロックへ移行した頃からドラッグ関係でバタバタし始め、前作『スティッキー・フィンガーズ』と本作では結構大変だったらしく、前作発表までに時間がかかった関係上却ってこちらとのスパンが相対的に小さくなったのかもしれない。特に本作ではメンバーが揃わないなどの問題を抱えた由。その状態は税金対策で向かったフランスのネルコート荘(推理小説的な言い方をしました)で主に起こり、その後ロサンゼルスでもセッションを行い、完成させた。曲によってはロンドンを含めて三つの場所が絡んでいるものもある。
 引き続きジミー・ミラーのプロデュースでありながらも、土臭さは少し減少してロックン・ロールに分類される曲が増えているという印象。アナログで言えば1枚目B面第1曲に当たる6曲目 Sweet Virginia 以降ルーツ・ミュージックが増えて来るが、乾いた印象より寧ろ沼沢っぽい感じを帯びる曲が2,3あって、これまでとは違う。カントリー・ロックもグラム・パースンズ寄りなので結構ポップ。
 個人的な印象としては、これまでミラーがプロデュースした4作の中で未だ一番ピンと来ていない。散漫であるという当初の世評はどうでも良いが、まだ真価が理解できていない感があるデス。ただ、ミック・テイラーの加入(前作から真のメンバーとなる)は僕にとって良い方に機能しているようだ。
 ビートルズ・ファンの間でも悪名高いアラン(もしくはアレン)・クラインとの契約関係で、Shine a Light など5曲が曲を作ったタイミングにより版権関係で訴えられ、クラインも販売する権利を勝ち取った、という大人の事情をめぐるお話もある。

【音質】8.0/10・・・2010年リマスターのUMe盤(FBIの記述があるので恐らく米国製)
前作『スティッキー・フィンガーズ』とほぼ同じ。中高域の音の粒立ちも低域の量感も十分で、この時代の録音としては文句なし。


1. Rocks Off
【評価 A】ロックン・ロール。日本ではシングルになった。英語版 Wikipedia にサイケデリック・ロックとあるのは、ブリッジの部分への言及だろう。ドラッグ・ソングと言える次第。この時代あるいはこのアルバムの傾向通りホーン・セクションを活躍する軽快な曲で、ニッキー・ホプキンズのピアノが実にロックン・ロールしていて良いです。

2. Rip This Joint
【評価 A】ロックン・ロール。ストーンズ史上最もBPMが速い曲と言われる。前曲同様ボビー・キーズのトランペットとジム・プライスのトランペット/トロンボーンはこの曲では50年代のロックン・ロールを想起させる。ホプキンズのピアノも同様で、当時チャック・ベリーと仕事をしたジョニー・ジョーンズに似ているそうな。

3. Shake Your Hips
【評価 A】ブルース・ロック。スリム・ハーポのカヴァー。始まり方が良い。同じような始まり方をする他ミュージシャンの曲があったが思い出せない。こういうブギー的な感じのブルースは同時代にそれなりに人気のあったキャンド・ヒートがやりそうだが。

4. Casino Boogie
【評価 B】ブルース・ロック。ベースが目立つと思ったら、やはり演奏者はキース・リチャーズでした。

5. Tumbling Dice
【評価 S】ロックン・ロール。スワンプ・ロック。シングル曲。邦題は「ダイスをころがせ」で、僕がこのアルバムを買う前に知っていた唯一の曲ではないかな? 通常ならこの曲を第1曲にしただろうが、何故かキャッチーだが少し弱い Rocks Off に譲った。これもベースが結構目立つと思ったら、スライド・ギターのミック・テイラーが弾いていました。ビル・ワイマンはドラッグをやらないのでへろへろだったわけではなく、干されていたか、自ら不参加を選んだかのどちらかのようだ。ドラムスはチャーリー・ワッツの外、コーダ(それまでと調子を変えたアウトロ)でプロデューサーのジミー・ミラーが叩いている。僕の考えではコーダは2分17秒から始まる。ジャガー=リチャーズのコンビは、イントロからヴァース(Aメロ)にかけてスワンプ・ロックの第一人者クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「プラウド・メアリー」Proud Mary を意識した可能性を感じるが、いかが?

6. Sweet Virginia
【評価 A】カントリー・ロック。ブルース・ロック。ピアノはイアン・スチュワート。次の曲ほどではないが、グラム・パースンズへの傾倒が認められる。このアルバムの中では一番土っぽく、タンブルウィードが頭を過ぎる。ただ、東海岸のヴァージニアにタンブルウィードが発生するかどうか知らない。

7. Torn and Frayed
【評価 A】カントリー・ロック。最もグラム・パースンズ的な曲と言われているらしい。それらしさを出すのに一役買っているスティール・ギターはパースンズの関係者アル・パーキンズとの由。ベースは、ワイマンがまた参加せず、テイラーによる。ピアノはワイマンより余程本アルバムの曲に参加しているホプキンズ。

8. Sweet Black Angel
【評価 A】フォーク。カリブ海の土着的リズムを取り入れたらしく異色のムードあって面白い。シングル Tumbling Dice のB面。

9. Loving Cup
【評価 A】ロック。キーズのトランペットとプライスのトランペット/トロンボーンの為にこの頃のストーンズのロックは時にソウルのムードが出るような気がする。ホプキンズのピアノが地味に活躍している。この曲ではワイマンがちゃんとベースを弾いていますよ。

10. Happy
【評価 A】ロックン・ロール。リチャーズが単独リード・ヴォーカルを取る。異色なのは、ジャガーとリチャーズ以外のストーンズのメンバーが参加しない代わりに、お馴染みキーズがサクソフォンで、プライスがトランペットとトロンボーンで参加。チャーリー・ワッツの代わりにプロデューサーのミラーがドラムスを叩いている。ベースは、専業のワイマンに比べて激しく動かしたがるリチャーズがやっているだけに目立つ。シングル曲。

11. Turd on the Run
【評価 B】ブルース・ロック。しかし、Aメロにチャック・ベリーの影響を感じる。少々下品な表現の失恋ソングだ。

12. Ventilation Blues
【評価 A】ブルース・ロック。フェイド・アウトしてオーヴァーラップの形で次の曲に繋がる。コンセプト・アルバム『サタニック・マジェスティーズ』でもシームレスはやらなかったので、ストーンズ史上初めてですね。テイラーが作者にクレジットされている。ピアノはホプキンズ。

13. I Just Want to See His Face
【評価 A】ゴスペル。前曲とオーヴァーラップする形で始まる。チャーリー・ワッツのドラムスが古代的あるいはアフリカンで呪術的な感じあり。8曲目 Sweet Black Angel と合わせてアルバム・ジャケットに関連付けたくなる。ビル・プラマーなるセッション・ミュージシャンのウッドベースにも注目すべし。

14. Let It Loose
【評価 A】ゴスペル・ブルース。この曲に限らないが、関わった曲ではニッキー・ホプキンズのピアノが効く。宿痾を持っていて長生きできなかったのが惜しい才能だ(と2年前に名前を知ったばかりなのに知ったかぶり)。ワッツが、グルーヴ感が出せないとして干されることの多いゴスペルだけれどドラムを叩いている。これが結構印象深い。

15. All Down the Line
【評価 B】ハード・ロック。シングル Happy のB面。ストーンズの中では(ホーン・セクションが変わらずにあるが)かなりストレートなロックという気がする。再びプラマーのウッドベースが目立つ。ボーっと聴いているとエレキ・ベースと区別できませんな。

16. Stop Breaking Down
【評価 A】ブルース・ロック。ロバート・ジョンソンのカヴァーだが、今回はぐっとロック的なアレンジで、テイラーのスライド・ギターが格好良い。ピアノはメジャー・デビュー前のメンバーであるイアン・スチュワート。彼のピアノも結構良いです。クライン案件の曲。

17. Shine a Light
【評価 S】ブルース・ロック。ゴスペル。最終的にブライアン・ジョーンズに捧げられた歌であるとの由。素晴らしいメロディーに乗った、"君に神の栄光あれかし"(意訳)、という歌詞に泣けてきます。ワッツはこういうゴスペルになると叩かせてもらえず、プロデューサーのジミー・ミラーがまたまた代わりに叩く。テイラーのリード・ギターが素晴らしい。僕はどうも彼のギターと相性が良いようだ。レゲエもしくはロックステディのような感覚を部分的に覚えるのは、寧ろレゲエなどがアメリカの黒人音楽からの影響を受けて成立したジャンルであることの証左だろう。ピアノとオルガンはビートルズ・ファンにもお馴染みビリー・プレストン。

18. Soul Survivor
【評価 B】ブルース・ロック。一番素晴らしく感じられる曲の後ということもあり、僕にはどうも印象に残らない。

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